九割九分九厘蛇足

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【書籍感想文】浜村渚の計算ノート 7さつめ 悪魔とポタージュスープ

(2017/4/17 若干修正しました。)

 

浜村渚の計算ノートシリーズは数学を題材にした小説だ。読んでから少し経っているが、感想をば。

ちなみに本書はタイトルに7冊目と書いてあるが、実質8冊目である。

 

 

 

トリックについてのネタバレはなし。まぁネタバレするほどでもないけど。

 数学、物理の内容に関して、私の不理解により、間違ってる可能性があります。

 

 シリーズ全体について

まず読んだことのない人用に全体のあらすじ

政府が少年犯罪の急増を受けて、心の教育と称して、芸術やら公民やらの授業を増やし、数学を始めとする理系科目を軽視するように。理系教師は職場を失い、天才数学者ドクターピタゴラスこと高木源一郎を筆頭に、テロ活動を始めてしまう。数学に沿った犯行を行うテロ集団に数学音痴の警察たちはてんやわんや。そんな折、数学好きのJCが現る!
というそんなお話。テロ活動を始める経緯は、もう少し細かい話なのだが、大まかにした。

 

この話、んなアホなと思うかもしれないが、あながち笑いごとではないと思う。下手したら実現しそうだ。

数学者や物理学者に心がないと思っている人がもし本当にいるのならば、岡潔寺田寅彦について調べてきてもらって、10000字以内でレポートを書いてきてもらいたい。

 

 

今作で扱っている数学の内容

数直線、負の数

ギリシアの三大作図問題(円積問題、立方体倍積問題、角の三等分問題)

誕生日パラドクス

ケプラーの法則

充填問題

アポロニウスの窓

ペアノの公理

 

他に、キューティー・オイラーという人物が出てくるのだが、その人が細々したネタを大量にぶっこんでいるが、省略。

 

以下適当にコメント。

 

誕生日パラドクスはバースデイ問題とか誕生日問題とか色々な呼ばれ方をしている。この誕生日パラドクス、そろそろ扱うのではないかなと私は踏んでいたのだが、実際にそうなった。

 

ケプラーの法則は、厳密には数学の内容ではない。物理の内容である。そもそも数学に法則という言葉は出てこない。法則とは、現実に起こる現象を観測した結果、推測されることである。推測されることなので、間違っている可能性がある。実際、ニュートン力学量子力学によって否定された(ただし、ニュートン力学は今も有用である)。まぁ理系科目ならなんでも来いという精神を持ちましょう。なんだったら文系科目でもなんでも来いという精神も持ちましょう。

 

上で書かなかったが、単位長の線分が1回転するとき、その線分の挙動がどういう場合のとき掃く面積が最小になるか、という問題も出ている。この問題、作中で答えを明かしてしまうのだが、その背景は示さない(読めば分かるが、このとき登場人物たちは忙しくて背景を説明しているどころではない)。

私はこの問題について、名前も知らなかったので、適当に「線分 掃く面積 最小」というキーワードで検索エンジンにかけて調べたが、この問題は、掛谷問題とか、掛谷宗一とか、Besicovitch集合などで調べるとより分かる。

 

 

感想

本書のシリーズ、分類するならばミステリであり、毎回、そういう要素を取り入れているが、今作のトリックは全体的に簡単であったと思う。まぁ子供向きに書いているというのもあるかもしれない(誤解のないように書いておくと、子供相手だから手加減していいと言ってるのではない。むしろ真剣にあるべきだと思う)。それにトリックを難解にすればいいというものでもないと思う。

 

今作に限った話ではないが、このシリーズの特徴として、幾何学を多く扱っていることが挙げられる。これは良いことだと私はそう思う。昨今、幾何学は入試でもあまり姿を見せないし、大学に入ってからも扱うことが少ないと思われるが、これが本当の数学だ。京大などは他の大学に比べると随分と出題しているように感じるが、それは学問をする場としての矜持のようなものだと思う。

 

キューティーオイラーの数学漫才は途中でダイジェストになるが、全部聞いてみたかった。絶対面白いから。

 

渚が、瀬島にいつまで数学の話をしているんだと言われた時。キューティー・オイラーに数学のない学校は楽しいか聞かれたとき。渚の返答には頭が上がらない。